20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家 デ・キリコの大回顧展「デ・キリコ展」が神戸市立博物館にて2024年12月8日まで開催
2024年9月14日(土)から12月8日(日) まで20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家「デ・キリコ展」を神戸市立博物館にて開催します。日本ではかつてない規模の回顧展です。デ・キリコ芸術の見どころや展示作品をご紹介します。
※以下、画像とテキストは、情報提供を受けてプレスリリースから引用
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- 01 20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家 デ・キリコの大回顧展
- 02 展示構成
- 02.1 第一章 自画像・肖像画
- 02.2 第二章 形而上絵画
- 02.3 第三章 1920年代の展開
- 02.4 第四章 伝統的な絵画への回帰:「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ
- 02.5 第五章 新形而上絵画
- 03 音声ガイドナビゲーター
20世紀美術に衝撃を与えた孤高の画家 デ・キリコの大回顧展
《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》の前でポーズを取るジョルジョ・デ・キリコ、1968年、自宅のサロンにて
Photo: Walter Mori (提供:ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団)本展はデ・キリコのおよそ70年にわたる画業を「イタリア広場」「形而上的室内」「マヌカン」などのテーマに分け、初期から晩年までの絵画を余すところなく紹介。さらに彼が手掛けた彫刻や舞台美術も展示する、日本ではかつてない規模の回顧展です。デ・キリコ芸術の全体像に迫る、その唯一無二の表現力をご堪能ください。
展示構成
第一章 自画像・肖像画
デ・キリコが生涯にわたって取り組んできた自画像は、自らの画家としての立場を表明する重要な主題でした。自画像の中で彼は、古風な出で立ちで自己を演出するばかりではなく、西洋絵画の伝統的なマチエールを意識した表現技法を披露しています。
《17世紀の衣装をまとった公園での自画像》
1959年、油彩・カンヴァス ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024デ・キリコが古典絵画に傾倒していた1922年頃に描いた自画像。画家の前には、古代彫刻風の理想化されたデ・キリコ自身の肖像彫刻が置かれています。本作においてデ・キリコは、古代彫刻から学んだ過去の巨匠たちのように、歴史と対話をして制作する画家として自身を表しています。
《弟の肖像》
1910年、油彩・カンヴァス ベルリン国立美術館
© Photo Scala, Firenze / bpk, Bildagentur fuer Kunst,
Kultur und Geschichte, Berlin
© Giorgio de Chirico, by SIAE 202418 歳の弟アンドレア(1891-1952 。1914年からアルベルト・サヴィーニオを名乗る)を描く初期の肖像画です。窓の外の神話的世界には半人半馬のケンタウロス族の賢者ケイローンの姿が見えますが、早逝した父に代わり、弟へ教育を行ったデ・キリコ自身を示すモティーフと考えられます。
第二章 形而上絵画
デ・キリコは1910年代に歪んだ遠近法や脈絡のないモティーフの配置、幻想的な雰囲気によって日常の奥に潜む非日常や神秘、謎を表した革新的な絵画を描き始めます。ニーチェの哲学に影響を受けたその作品群に、後に自ら「形而上(けいじじょう)絵画」と名付けました。それらはシュルレアリストなど多くの芸術家に刺激をあたえました。
《バラ色の塔のあるイタリア広場》
1934年頃、油彩・カンヴァス
トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館(L.F.コレクションより長期貸与)
© Archivio Fotografico e Mediateca Mart © Giorgio de Chirico, by SIAE 2024デ・キリコの初めて売れた作品《赤い塔》(1913年) を、約20年経ってから再制作した作品。青年期のデ・キリコはニーチェの思想に深く共感し、その著書に現れる「秋の午後の情調」という概念にとらわれましたが、トリノの街中でこれを具現化したような澄み渡る空や長く伸びる影に長く伸びる影に覆われた街頭風景を目にし、強烈なインスピレーションを得たのです。
《福音書的な静物Ⅰ》
1916年、油彩・カンヴァス
大阪中之島美術館
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024第一次大戦の兵役時代に滞在したフェッラーラで制作した形而上的室内の代表作。閉鎖的で建築的要素の乏しい室内に、学習用具や機械の部品、ビスケット、軍用の海図などが配置されています。こうした脈絡のないモティーフの組み合わせで見るものに違和感を与える手法は、後のシュルレアリスムの画家たちを刺激することになります。
《予言者》
1914-15年、油彩・カンヴァス
ニューヨーク近代美術館(James Thrall Soby Bequest)
© Digital image, The Museum of Modern Art, New York / Scala, Firenze
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024「マヌカン(マネキン)」をデ・キリコが描き始めるのは、1914年、第一次世界大戦勃発後のこと。多くの人命が失われる絶望的な状況のなか、彼は古典的な人物表現のかわりに新たな形而上的絵画表現を体得します。様々なモティーフは遠近法を無視して配置され、限定された画面に広がる無限空間が、見る人の不安感を掻き立てます。彫像のように見える古典的な人間の姿をした影の主と対峙するマヌカンは、当時のデ・キリコが抱えていた表現者としてのジレンマを暗示しているのかもしれません。
《形而上的なミューズたち》
1918年、油彩・カンヴァス
カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館
(フランチェスコ・フェデリコ・チェッルーティ美術財団より長期貸与)
© Castello di Rivoli Museo d’Arte Contemporanea, Rivoli-Turin, long-term loan from Fondazione Cerruti
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024フェッラーラ期最後の代表作。狭い室内に置かれた2体のマヌカンは、以前に増して濃密かつ美しい色彩で描かれていますが、同時にモティーフの立体感を際立たせる明暗法には、後の古典回帰の時代を予告しています。顔のないマヌカンは不可解で異様な印象を与えつつ、どこか記念碑的な威厳も備えています。
第三章 1920年代の展開
1920年代、デ・キリコは従来のマヌカンに加え、「室内風景と谷間の家具」「剣闘士」などの新たな主題にも取り組みます。海や神殿、山々など、本来は外にあるはずのものが天井の低い部屋の中にあります。逆に屋内にあるべき家具が外に置かれており、ちぐはぐで不穏なイメージを作り出しています。
《緑の雨戸のある家》
1925-26年、油彩・カンヴァス
個人蔵
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024《谷間の家具》
1927年、油彩・カンヴァス
トレント・エ・ロヴェレート近現代美術館(L.F.コレクションより長期貸与)
© Archivio Fotografico e Mediateca Mart
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024第四章 伝統的な絵画への回帰:「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ
デ・キリコは1920年ごろから、ティツィアーノやラファエロ、デューラーといったルネサンス期の作品に、次いで1940年代にルーベンスやヴァトーなどに加えて、19世紀フランスの新古典主義などの作品に傾倒し、伝統的絵画表現へと回帰していきます。過去の巨匠たちの傑作を研究し、これらを強く意識した作品を描くようになります。
《風景の中で水浴する女たちと赤い布》
1945年、油彩・カンヴァス
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 20241920年代後半に中断していたデ・キリコの古典絵画研究は、1930年代に再開されます。本作品は後に妻となるイーザをモデルとして、ルノワールの晩年の水浴画に通じる手法で表現しています。
イーザをモデルとする水浴画ですが、手前の果物の描写や奥の木々の描き方などを見ると、17世紀のバロック絵画、そしてアングル、ドラクロワ、クールベといった19世紀フランス絵画を連想させる表現も見られます。
第五章 新形而上絵画
1978年に亡くなるまでの10年余りの時期にデ・キリコは、あらためて形而上絵画に取り組みます。それらは「新形而上絵画」と呼ばれ、若い頃に描いた広場やマヌカン、室内風景などに新しい要素を画面上で融合し、過去の作品を再解釈した新しい境地に到達します。
《オデュッセウスの帰還》
1968年、油彩・カンヴァス
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024長く苦難に満ちた旅路の果てに帰郷したギリシャ神話の英雄オデュッセウスが、ボートを漕ぐ姿を描きます。舞台は現代風の室内で、右の窓の外には故郷ギリシャの風景が見え、左の壁には「イタリア広場」を描いた作品がかけられていることから、ここはデ・キリコ自身の居室と解釈できます。室内の椅子や洋服ダンスなどもデ・キリコが過去に描いたモティーフです。画家は、英雄の旅路を、自身の長く険しい人生と重ねています。
《燃えつきた太陽のある形而上的室内》
1971年、油彩・カンヴァス
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024《瞑想する人》
1971年、油彩・カンヴァス
ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団
© Fondazione Giorgio e Isa de Chirico, Roma
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024音声ガイドナビゲーター
役者のムロツヨシさんが音声ガイドに初登場!
ムロツヨシ/役者
1976年1月23日生まれ、神奈川県出身。大学在学中に役者を志し、99年に作・演出・出演を行った独り舞台で活動を開始、映画「サマータイムマシン・ブルース」をきっかけに映像にも活動を広げる、現在映画、ドラマ、舞台とジャンルを問わず活躍中。音声ガイドのナビゲーターを務めるのは今回が初めてというムロさん。
「ひとりの表現者として、何ができるか。皆さまとデ・キリコの作品との出会いに、お供させて頂けたら嬉しい限りです、宜しくお願い致します。ムロツヨシです。」と語ってくれました。「形而上絵画」とはなにか?不思議な世界を分かりやすく解説いただきます、是非ご期待ください。【貸出料金】
会場レンタル版1台650円(税込)
アプリ配信版(iOS/Android)「聴く美術」
配信料金700円(税込)※配信期間限定デ・キリコ展楽曲タイアップは世界的ピアニスト辻󠄀井伸行さん!
世界的ピアニスト、辻󠄀井伸行さんが演奏するクロード・ドビュッシー作曲の『喜びの島』がデ・キリコ展のテーマ曲に決定。
「デ・キリコと一緒に仕事をされたことがあるというドビュッシーは、自分も大好きな作曲家の1人です。『喜びの島』は愛のうたでもあり、美術にもゆかりの深い楽曲なので、デ・キリコの作品を観ながら、みなさまに聴いていただけるとうれしいです。」
[使用楽曲] クロード・ドビュッシー『喜びの島』辻󠄀井伸行(ピアノ) Nobuyuki Tsujii, piano
2009年6月「第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」において日本人として初優勝を飾る。以来、世界的なピアニストのひとりとして活躍し、ニューヨークのカーネギーホールの主催公演やイギリス最大の音楽祭「プロムス」などに出演し大成功を収めたほか、ウィーン楽友協会やベルリン・フィルハーモニー、パリのシャンゼリゼ劇場などの世界の著名なホールで例年コンサートを開催し、高い評価と多くの聴衆の支持を得ている。また、欧米の一流オーケストラからソリストとしての出演希望を数多く寄せられ、ゲルギエフやアシュケナージなどの世界的指揮者からも高い評価を受け、これまでに数多くの共演を行っている。
開催概要
展覧会名 デ・キリコ展 会期 2024年9月14日(土)~12月8日(日) 時間 9:30~17:30
※金曜日、土曜日は20:00まで
※展示室への入場は閉館の30分前まで休館日 月曜日、10月15日(火)、11月5日(火)
(ただし10月14日[月・祝]、11月4日[月・振休]は開館)会場 神戸市立博物館 住所 〒650-0034 兵庫県神戸市中央区京町24 MAP 入場料 一般 /2,000円(1,800円)
大学生/1,000円(900円)
高校生以下/無料
※表示価格は全て税込み。
※( )内は団体(20名以上)料金。
※神戸市在住で満65歳以上の方は当日一般料金の半額。(確認できるものをご持参ください)
※障害のある方は障害者手帳等の提示で無料。(確認できるものをご持参ください)チケット購入先 公式オンラインチケット、ローソンチケット、チケットぴあ、イープラス、セブンチケット、CNプレイガイド、アソビュー!、楽天チケット、近鉄駅営業所、チケットポートなんば店 ほか 公式サイト https://dechirico.exhibit.jp/ 神戸展サイト https://www.ktv.jp/event/dechirico/ 美術館公式サイト https://www.kobecitymuseum.jp/ SNS一覧 主催 神戸市立博物館、朝日新聞社、関西テレビ放送 後援 イタリア大使館 特別協賛 大和証券グループ 協賛 大和ハウス工業、NISSHA 企画協力 ジョルジョ・エ・イーザ・デ・キリコ財団、メタモルフォジ財団 特別協力 イタリア文化会館-大阪 協力 日本航空、日本貨物航空、ルフトハンザ カーゴ AG、ITAエアウェイズ
Takenaka Kenji
playpark合同会社 代表・クリエイティブディレクター
1983年生まれ。大阪の出版社でデザイナー・編集者として勤務。ECサイト会社などを経て2017年デザイン事務所playparkを設立。2022年にアート、デザイン、エンタメ、クリエティブなど業界のクリエイティブを「発見し、考え、繋げる」をテーマにWEBマガジンBuzzBubble(バズルバブル)をスタートさせる。
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